前回のおさらい
世界一の漁場を持ちながら全く活かせない日本に憤る熊と、そんなのどうでもいいからさっさと寿司を食べたい女子高生。
また、日本では漁業は儲からないという印象がつきまといますが外国は違います。ノルウェーなんかだと、年収1000万、2000万プレイヤーがざらにいるみたいですね。
力仕事をする人より、機械を管理するエンジニアの方が多いみたいですね。大卒のエンジニアに人気の職業らしいですが、国が漁業ライセンスを厳しく制限しているためなかなかなれないそうです。
ノルウェーの漁業が近代化できた理由
世界三大漁場の一つ、北東大西洋海域が近くにあるノルウェーは古くから漁業が盛んでした。しかし、乱獲によりサーモンが激減してしまいます。
その時ノルウェーが反面教師にしたのが、1950年代ににしんを枯渇させた日本でした。ある程度の数がいれば資源量は回復しますが、絶滅近くまで追いやると回復はほぼ不可能になります。日本と同じ轍を踏むまいと、資源管理を開始しました。
もちろん漁業関係者、とりわけ漁師は猛反発します。資源管理、漁獲規制を進める政治家を狙った殺人未遂事件なども起こったそうです!それでも、漁業が国の柱だと考えた政治家は法整備をやり抜きます。
そして数年後には資源が回復し、その成功体験から今日まで漁業を発展させています。
これだけ書くと、ノルウェーが強い意志で自力で何もかもやったように見えるかもしれません。しかし、その影には日本の技術力が大きく関わっています。漁具や魚群探知機、果ては工場のラインまで、そのまま日本のものが使われていたりします。
日本でサバを乱獲し、激減して困ったのは漁師ではなく缶詰の加工会社だったといいます。そこで、サバの捕れるノルウェーに目を付け、ノルウェーに行き設備を整え全てのノウハウを教えました。
つまり、日本人の作った道具や技術でサバを捕ってもらい輸入するという、本末転倒なことになっています。
一年中ノルウェーサバが美味しい理由
スーパーで売ってるサバはノルウェー産のものばかり目につきます。年中美味しい理由は、前編で触れた個別漁獲割当制度(IQ制度)の賜物です。漁師が協調して質のいいサバだけ捕獲、輸出しています。なお、ノルウェーではサバはほとんど食べないそうです。
食べ物といえば国産!安心で美味しい!となるのが日本人の性ですが、ことサバに関してはノルウェーサバの方が脂が乗ってて美味しいです。(もちろん好みによりますが。)
サバは2歳になると卵を産み始めるのですが、日本では0歳や1歳から捕り始めるので、脂がのる前でパサパサして美味しくありません。
・改革当初こそ現場は抵抗したが、政治家の強い決断を国民が支持した。
・収入が増えたら文句を言う漁業関係者はいなくなった
・省力化投資が功を奏し、漁業の機械化が進んでいると同時に漁師の数は減っている
・一人あたりの生産性が高いので漁業全体の生産は右肩上がり
漁業復活の方法は分かっているけど実行できない。ここからは既得権まみれの日本の漁業についてお話します。その前に、魚を捕るにも様々な漁法がありますので、こちらを見て下さい。
↑巻き網漁のイメージ図。長さが1キロから2キロの巨大な網で魚を取り囲み捕獲する。効率はいいが、網にこすれたり魚にストレスがかかるため品質はよくない。大型船と人手が必要でお金がかかる。
↑はえ縄漁のイメージ図。とてつもなく長い縄(10~150キロ)を海に延ばし、餌に食いついた魚をまとめて捕獲する。釣れる魚の品質はいいが、縄の長さ次第で一日がかりになることもある。少人数で行うこともある。
↑カツオの一本釣りのイメージ図。一本一本釣るため効率はよくないが、非常に品質のいいものが釣れる。大型で値段のつくマグロは一本釣りで釣られたもの。
諸悪の根源水産庁!天下り万歳!
国内の漁獲枠の割り当ては水産庁が決定します。この配分が非常に不公平なのです。巻き網や定置網などの大資本を必要とする大手の会社(○ルハ、ニ○スイなど…)が優遇され、はえ縄や一本釣りなど個人の小さい船は少ししか割り当てられません。
そうです。水産庁の役人様は大手の会社に退職後天下りをしています。
上のイラストを見てもらえれば分かりますが、巻き網は非常に効率がいいです。
しかし、魚が一か所に集まっていないと効果は半減します。一か所に確実に集まる場所は産卵期の産卵場です。卵を産みに集まった魚を一網打尽にするわけです。
確かに効率よく魚は捕れますが、そんなことをすれば魚がいなくなるのは小学生でも分かります。
日本で捕れるホンマグロ(太平洋クロマグロ)を非常に小さいうちから捕獲していった結果、なんと資源の97%が減っています!このままだと食べられなくなるのも時間の問題です。
ヨーロッパでは大西洋クロマグロが80%減ったために全面禁漁にしました。その結果、数年で資源はV字回復しています。マグロのような大きい魚はある程度まで大きくなると捕食者がいなくなるので、捕らなければ資源は容易に戻ります。しかしそれも、絶滅してからでは遅いのです。
水産庁の役人様は私利私欲のためだけに、国民の財産である魚を減らし続けるのは罪が大きいと思います。
政治家、マスコミ、ヤクザまで!日本漁業の抱える問題
政治家の中にも漁業組合や水産会社と繋がっている人もいます。
元長崎県知事で現参議院議員の金子源次郎氏は、自身の一族が経営する金子漁業グループを産業再生法によって再建させています。税金を使って自分の一族の会社を再建させる必要があったのでしょうか?ちなみにこの人、台湾を国として認めていないと公の場で発言しています。一体誰に忖度しているのでしょうか?
役人や政治家に留まらず、ヤクザまで暗躍しています。2019年8月、密漁した魚を親族経営のお店で安く提供し、指定暴力団6名が漁業法違反の疑いで逮捕されました。
また、今や絶滅の危機に瀕しているウナギの密漁もヤクザの「シノギ」になっているのは昔から有名ですが、水産庁は現状を把握しながらも厳しい規制に踏み込めていません。
マスコミのフェイクニュースとミスリードも魚減少に一役も二役も買っています。
ここまで読んだいただいた方は、魚の減少は乱獲の影響が大きいと理解していただけたと思います。
しかし、マスコミが流す魚の減少の原因というと、地球温暖化や海外勢の乱獲、黒潮大蛇行やら生態系の変化などで、日本の乱獲の実態に触れることはありません。
日本の乱獲以外の要因では、漁獲高が日本だけ数十年に渡って減り続けている説明はつきません。前編でも触れましたが、養殖業の生産が減っているのも日本だけです。
漁獲規制で魚が食べられなくなると煽るのも非常に罪深い。今のうちに食べておこうという気にさせてしまいますし、そもそも漁獲規制は持続的に食べられるようにするためのものです。真逆のことを言っています。
養殖がスゴイ!という特集も見かけますが、養殖はコストがかかる上に、自然の生物に影響を与えるのではと海外で問題になっています。養殖魚を喜んで放流している国は日本だけです。 ※海藻類や貝類の養殖は環境に優しいので全く問題ない。
マスコミはスポンサーになっている大企業に忖度をして真実を伝えないのか、それとも何も分かっていないのでしょうか。
漁業法も改正され、確実にいい方向に向かってはいると思います。しかし、これからが大変でしょうね。IQ制度の本格導入となれば、利権を争って激しく対立するのは目に見えています。
2話構成で日本の漁業について書いてきましたが、まだまだ書ききれないくらい問題や誤解は山積みです。最近ではカツオも激減しています。カツオが捕れなくなると鰹節を作れなくなるので和食の危機です。だからといって魚を一切食べるなと言っているのではありません。多少の我慢は必要ですが、市場に出回ったものは有難くいただくべきだと思います。
我々消費者ができることは、漁業に関する正しい知識を身につけ、周知していくことです。国民が賢くなれば、マスコミや役人、政治家は好き放題しにくくなるはずです。
そうすることにより、いつの日か日本の水産資源が回復し、世界一の漁業国に返り咲く日が来ることを願っています。
・IQ制度を利用した資源管理の徹底(行政、漁業者がやること)
・個人が正しい知識を身につけ、マスコミや利害関係者の監視(我々ができること)
・魚は捕らなければ間違いなく増える(みんな覚えておくべきこと)