
増税派、襲来
「6月末に日銀審議委員の任期を終える布野氏に代わり、次期審議委員に中村豊明氏を充てる同意人事を参議院で可決。」
このニュースを知っている人、ピンと来た人はどれくらいいるでしょうか。実はこのニュース、今後の日本を左右する程大きなニュースと言っても過言ではありません。
日本の中央銀行、日銀こと日本銀行ですが、中でも強大な権限を握るのが9人で構成される「日銀政策委員会」です。
投資をやってる人にはお馴染みの「金融政策決定会合」にてこの9人が金融政策を決めるので、日本の命運を握っていると言えます。
そこに7月から名を連ねることになる中村豊明氏は「デフレ下でも増税すべし」と過去に国会で述べたことのある増税派の人物です。
日本の経済をダイレクトに左右する日銀がしっかりしないと景気回復は望めません。よって、総理大臣の大きな権力の一つは日銀人事への介入です。
景気が良ければ支持率は上がり、選挙での勝率がぐんと上がります。政治家は選挙で当選することを至上の目的としているので、勝たせてくれる総理に従うしかありません。
これまで安倍総理は、黒田総裁を始め日銀に意中の人物を送り込み続けてきました。衆参ともに自民党が抑えているので同意人事も問題なく可決されます。
第二次安倍政権以降、日銀人事だけは間違えなかったので景気は回復基調にありました。しかし、ここにきて増税派を指名したということは安倍首相の力が弱っていることの証左です。


日銀審議委員は属性で決まる
日銀政策委員会は総裁1人、副総裁2人、審議委員6人の計9人で構成され、任期は役職を問わず5年です。
正副総裁は5年ごと一斉に。その他の役員はそれぞれ就任時期にズレがあるので、任期満了になると新たな役員を政府が選出し、衆参両院の国会同意人事で可決されれば就任となります。
年に八度行われる金融政策決定会合でそれぞれが一票を持ち、投票によって金融政策の行方を決めるので正副総裁以外もとても重要です。
日本の金融政策を決めるのだから、9人全員が経済学に精通していて適切な金融政策を実行しているんでしょ!?彼らに任せれば安心!…と思いきや全然そんなことはありません。(もちろん経済学に明るい人もいます)
基本的に時の権力者の意向に沿う人物が選ばれるので、増税したいと思えば増税派が就任することになります。
おまけに、9つの席は「財務省枠(黒田総裁)」「学者枠(若田部副総裁)」「産業界枠」といった属性によって設けられていて、「産業界枠」として民間企業から選ばれる人物は、その会社で「仕事ができないから選ばれる」という訳の分からないケースが多々あるようです。(仕事ができるならそのまま会社に残りますからね。)
つまり、能力重視というよりも慣習と政治的な意味合いで選ばれる側面が大きい。今回選ばれた中村氏も産業界枠です。
中村氏は先日、過去の「デフレでも増税すべし」発言を国会で問いただされ、「あの時は経団連を代表して述べただけで、審議委員になったら皆さんの意見に従います」と述べました。

こんなやる気のない人物を入れれば、アベノミクス反対派が勢力を伸ばしてくればそちらに寝返るのは目に見えています!
一度就任すれば無敵のポジション
政策委員に選ばれると5年間は絶対クビになりません。以前は内閣が政策委員を不適格と認めればクビにできましたが、1997年に改悪された日銀法によりできなくなりました。
昔は日銀の立場が弱く政治家が簡単にクビを飛ばせたので、中央銀行の独立性を保つという名目によりできた法律ですが、独立性の意味を履き違える人が多くいます。
この場合の独立性というのは、「目標を達成できるならやり方は任せる」という意味であって、「勝手に目標を立てて実行する」ではないのです。目標はあくまで、国民が選挙で選んだ政治家が決めるべきです。
政府が金融緩和しろと言っても全然聞かなかったのが、黒田総裁以前の3人の総裁です。(速水氏、福井氏、白川氏)
この人たちは分かってやっていたのかどうか分かりませんが、反日国家が喜ぶような政策を採用しデフレを招きました。失われた20年です。
選挙で選ばれたわけでもない人間が責任を取ることなく好き勝手に振る舞えたら民主主義国家とは言えません。ゆえに、日銀政策委員に限らず、過度な身分保障は腐敗に繋がるので撤廃するのが妥当でしょう。


暗黒時代に逆戻り?政治リテラシーを上げよう!
今回増税派が送り込まれたことを考えると、今後もその流れは変わらないと考えておく方がベターです。黒田総裁の後任は現副総裁の雨宮氏になると言われています。この人も隙あらば緊縮みたいなタイプです。黒田総裁は「財務省枠」なので、後任は言うまでもなく元財務官僚…。
現在日銀政策委員にはお金を刷ることに積極的な「リフレ派」とされる人物が3人(若田部氏、片岡氏、安達氏)います。この3人がいなくなれば暗黒の白川時代に逆戻りすることも考えられます。
ではどうすればいいのか?隅々まで目を見張らせることです。エリート官僚は目立つことを嫌うので、悪だくみをしているなと思ったら周知してやることが抑止力に繋がります。
それと、口だけ減税議員にも気を付けましょう。普段減税を声高に叫んでおいて、今回の中村氏の同意人事で賛成票を投じた人が多くいます。というか、自民、公明、維新は全員賛成しました。
党議拘束(自分の所属する党の決定に従うこと)があるので~という言い訳に耳を貸す必要はありません。そんな言い訳を聞いていたらいつまで経っても真面目に働いてくれません。とにかく嘘つきは落とす!
今我々にできることは政治リテラシーを上げておくことです。正しい選択が何かを分かっていない状態で選挙に行っても逆効果だからです。






・今後日銀政策決定委員に増税派が増える
・官僚に負けない政治家・組織・構造が必要(民間シンクタンクの創設と活用)
・個人の政治リテラシーの向上を。賢い国民相手には好き勝手できなくなる。