経済が争点だったのは今や昔?
今の安倍政権を見ればよく分かりますが、経済が良ければ基本的に選挙に勝てます(日本の野党がダメ過ぎるだけかもしれませんが…)。大抵の人にとって政治的な思想よりも大切なのは日々の生活です。
かつてのアメリカも経済政策が主要なテーマでした。
1961年のケネディから2009年のブッシュまでは、消費者信頼感と大統領支持率は正の相関関係にあったようです。
それが崩れたのがオバマ時代で、現在のトランプ政権になってからも相関関係は見られません。
その証拠に、トランポノミクスの恩恵を最も受けている大都市部は民主党を支持していて、逆に米中貿易戦争の影響で都市部ほどの恩恵を受けていない郊外は共和党を支持しています。
なぜ経済以外の部分で投票先を決めるようになったのかは、社会が全体的に豊かになったことと、情報技術と選挙のマーケティング技術の発達が大きいようです。
今や一人一人がスマホを持っている時代ですので、個人情報は以前に比べ垂れ流して生活していると言っていいでしょう。
その情報を基に、個人をターゲットにしたより緻密な選挙戦を展開できるようになっています。
現在は経済ではなく「人種」「民族」「宗教」といった要素の方が重視されていると言いますが、「社会の分断」を煽ることによって無理やりこれらの争点を作り出しているのが現実です。
中間選挙以降苦戦する共和党とその原因
2年前の中間選挙では上院を共和党が過半数を維持しましたが、下院では民主党が過半数を取りました。
しかもこの選挙、上院は圧倒的に共和党が有利な選挙でした。上院100議席のうち、2年ごとに改選される(議席が入れ替わる)のは1/3の33議席(2018年は補欠選挙があったため35議席)。共和党は2018年から遡ること6年前に大敗を喫していたため、共和党の改選議席は僅か9議席(民主党26議席)。
近年の共和党は中間選挙で堅実な成果を挙げていたにも関わらず、結果は2議席しか増やすことができませんでした。州知事選挙など地方選挙でも芳しくない結果が続いています。
その原因として挙げられるのが、ネット献金プラットフォーム「Act Blue(アクトブルー)」の存在です。
選挙は莫大なお金がかかります。選挙資金という面でいえば、今までは大口の支援者がついている共和党が優勢でした。
しかし、少額から誰でも献金可能なアクトブルーを民主党が整備したため、選挙資金が飛躍的に集まるようになり、民主党の新人候補者が共和党のベテラン議員よりも選挙資金で上回るという事態が発生しています。
選挙資金だけで勝負が決まるものではありませんが、有利になるのは言うまでもありません。
共和党は中間選挙の敗北を受け、「Win Red」というネット献金プラットフォームを整備して対抗しようとしていますが、世論調査を見ると共和党が苦戦を強いられています。
全体的に民主党の方が身体が仕上がってる状態ですので、自力で勝っていると言えます。あくまで現在の状況ですが。
それでは民主党の有力な候補者を見ていきましょう。
民主党4人の有力候補
アメリカの大統領選はオリンピックイヤーの11月に実施されますが、立候補から当選まで1年半ほどかかる長丁場の戦いです。実は大統領選本戦よりも、候補者を決める予備選挙が熾烈とされており2月3日にアイオワ州でスタートします。ここで15%の指示を得られないと代議員を獲得することができません。
アイオワで党員集会(予備選)が開かれるようになった1972年以降の9回のうち5回(2000年以降は全勝)は、アイオワを制した民主党候補者は党の指名までこぎつけており、スタートダッシュを決める上でこの州は重要です。
現在民主党の有力候補と言われている4人の略歴と印象は次のような感じ。
①ジョー・バイデン(77歳、中道)
→オバマ時代の副大統領。息子のハンター・バイデンがウクライナや中国と様々な不正取引をしたとの疑惑がある。女性問題や人種差別も取りざたされたが、現在支持率トップ。
②バーニー・サンダース(78歳、左派)
→前回ヒラリーと最後まで争ったおじいちゃん。環境問題や格差是正を訴えていて若者から熱烈な支持を集め、バイデンと支持率は互角。
③エリザベス・ウォーレン(70歳、左派)
→大企業や富裕層への増税を求めている。同じく格差是正を訴えているが、サンダースとこの人の政策では景気が冷え込む可能性大。
④ピート・ブティジェッジ(38歳、中道?)
→ハーバード、オックスフォード大卒、マッキンゼーを経て29歳でインディアナ州サウスベンド市長に就任。8か国語を操るスーパーエリート。敬虔なクリスチャン、市長在任中に従軍経験有り、同性愛者などという様々なアイディンティティを持ち、幅広い票を集め急激に支持率を伸ばしたが最近失速気味。選挙戦の弱点は黒人票の弱さと、同性愛者に嫌悪感を持つ人が多いとのこと。
以上4人のうち、トランプに勝つ可能性が高い(といっても50~60%くらい)と見られているのがバイデンです。民主党の中では中道に位置するため、消極的トランプ支持層が流れること(もしくは棄権)が考えられます。
サンダースとウォーレンの場合はトランプ有利。二人の左派的な政策の場合、トランプにしてみれば対立軸を作りやすいからです。不気味なのがブティジェッジでしょう。オバマ大統領誕生の時のように、風が吹いて勝利ということも十分考えられます。
ちなみに前NY市長のブルームバーグ氏がここにきて支持率を伸ばしているという話もありますが、ソースが怪しいので除外しました。
・選挙争点が経済から個人の心情へ
・ネット献金の登場で新人候補者でも戦える時代に
・選挙は組織力が最重要
・現時点ではバイデンがくるとトランプピンチ?