前回のおさらい
絶好調のアメリカ経済でトランプ当選を楽観視する人が多いが、オバマ政権時代から株価と支持率の相関関係は崩れている。考えられる原因は社会全体が豊かになったことと、選挙のマーケティング技術の発達。そのような背景から、トランプを擁する共和党は中間選挙以降苦戦が続いている。そんな中、パっとしない民主党候補者を決める闘いがアイオワで幕を開けた。
アイオワ党員集会の勝者はトランプ?
アイオワ党員集会は戦前の予想と多少違った結果となりました。ブティジェッジ前サウスベンド市長(得票率26.2%)とサンダース氏(26.1%)が僅差のトップ争いを演じ、続いてウォーレン18%、バイデンは15%台と伸び悩みました。
原因はバイデン、ブティジェッジと同じく中道派のクロブチャー氏(12.3%)が支持を伸ばし両者の票を奪ったことです。
メディアはブティジェッジの勝利だと報じていますがほくそ笑んでいるのはトランプでしょう。票が割れるほど互いの候補者を憎むことに繋がり、自分の推す人物が党代表になれなかった場合投票を棄権することが往々にしてあるからです。
低調に終わった2016年のアイオワ党員集会と参加者の数は横ばいで、盛り上がりに欠けていたというのも共和党にとって嬉しいニュースでした。おまけに、脅威とみなしていたバイデンの得票が伸びなかったので言うことなし!
とはいえ、バイデンは全米で広く支持を集めているので巻き返しのチャンスはあります。対するブティジェッジは、アイオワに注力していた為今後どのように支持を集めるのか注目です。(早くも次の予備選の舞台ニューハンプシャー州では支持率が伸びていて、勢いで乗り切りそうな気配が漂い始めました。)
勝者総取り!アメリカ大統領選の特殊性
アメリカの大統領選は538人の「選挙人」を州単位で奪い合うという特殊な仕組みです。その結果前回は総得票数で200万票下回ったトランプが勝ちました。
選挙人の数は人口に応じて配分されるので、選挙人の数は州によって異なります。その為、全米支持率よりも選挙人の多い州を獲ることが重要になり、戦略次第でひっくり返すことも可能になるわけです。
1票でも多くとればその州は勝ちになるので、勝ちが濃厚な州は後回しにして「接戦州」と呼ばれる地域を優先的に回るのがセオリーです。
ヒラリーは圧倒的に有利なカリフォルニアに何度も足を運んだため、400万票差で同州を獲りました。トランプとの票差はカリフォルニアでついただけで、広い範囲でトランプが優勢だったことが分かります。
さて今回の選挙ですが、鍵を握るのは伝統的に民主党が強い5大湖周辺の「ラストベルト」と、共和党が強い南部の「サンベルト」になります。
↑2016年時の大統領選の結果。黒で囲った部分が民主党の強いラストベルト、黄色で囲った部分が共和党の強いサンベルト(厳密な定義は気にせず大雑把捉えて下さい)。灰色で囲った部分が今回接戦になりそうな州で、共和党本丸のテキサスも油断はできない状況。図は270 to winより引用。
議会多数派が民主党に!?サンベルトを死守せよ!
ラストベルトは前回ヒラリーの不人気もあってトランプが勝利しました。しかし、失業率が改善して恩恵にあずかったラストベルトの労働者層は民主党支持に戻っているようなので、今回もラストベルトを攻め崩す必要があります。
また、共和党が強いサンベルトが直近の世論調査と選挙で芳しくありません。人種や人口動態の変化、大都市からの移住で民主党支持率が上がっているからです。
前回はサンベルトを守る必要がなく、ラストベルトの攻めにだけ注力できたため共和党にしてみれば戦略の立てやすい選挙戦でしたが、今回は利害関係の異なるサンベルトとラストベルトの有権者両方を獲得しなければならない難しい選挙になります。
また、大統領選と同時に行われる上院議員選挙が共和党ピンチ!上院の改選議席35のうち共和党の改選が23議席、民主党は12議席のみだからです。現在上院で共和党は53議席ですが、過半数割れする可能性の方が高いと筆者は見ています。(2020年2月現在)
上院は最高裁判事、閣僚など人事承認権限を持っているのでとても重要です(もちろん下院も多数派が望ましい)。今回は上下両院共に民主党が過半数を占める可能性が有り予断を許しません。
トランプ落選で経済崩壊!?万が一に備えよう!
現在のアメリカの株価はミサイルが飛んでこようがコロナウイルスが大流行しようが、大きく下げてもすぐ戻すほどの強さです。
前編で経済は争点でなくなってきていると書きましたが、大統領選前に株価が暴落すれば印象は悪く票の流出に繋がりかねません。それを防ぐため何が起ころうとトランプはアクセルを踏み続けるでしょう。
大暴落がきてもFRBにさらなる金融緩和を促す可能性が高いと思います。つまり、投資をするなら下がったら買いというスタンスは変わりません。問題はこのまま右肩上がりの高値圏でトランプが負けた場合です。
民主党の掲げる政策は環境に配慮した経済運営や、社会保障の充実、軍縮といったアメリカの国力を後退させるものが中心です。とんでもないショックが世界を襲うであろうことは想像に難くありません。
万が一そうなった場合に備えて、様々なパターンを想定して対処できるようにしておこうというのが今回の記事の趣旨です。下がったら買いという必勝パターンが急に崩れる可能性も頭の隅に置いおきましょう。
つーわけで、株も債権も不動産も全部買え!バスに乗り遅れるな!
・上下院共に民主党が獲る可能性の方が高い!?
・予備選と一般教書演説で共和党が盛り返しそうな雰囲気
・民主党の大統領、議会多数派となれば終わりの始まり
・あらゆるパターンを想定して全力ベットは避ける
2 勝者総取り!アメリカ大統領選の特殊性
3 議会多数派が民主党に!?サンベルトを死守せよ!
4 トランプ落選で経済崩壊!?万が一に備えよう!