仮想通貨は死んでいない!?
2017年に空前のバブルを巻き起こしたビットコインをはじめとする仮想通貨ですが、2年前のコインチェック騒動により大暴落したのは記憶に新しいと思います。
その後は取引高が激減し、価格もほとんどの通貨がピークの1/10以下という悲惨な状況です。トレードをしない一般の方にはもう忘れ去られたことでしょう。
しかし、ビットコインの価格は一時期40万円を割りながらも、現在ではピークの4割の95万円まで回復しています。
相変わらず投機という側面が大きいのは事実ですが、自国通貨の信用できない国々による実需も少なからずあるということでしょう。
私たち日本人は、円という世界有数の通貨を日常的に使っている為にピンとこないかもしれませんが、自国通貨よりもビットコインの方が信用できるという人が世界には多くいるのです。
もし、ビットコインよりもはるかに優れた仮想通貨や金融システムが世の中に登場したらどうなるでしょうか?
※仮想通貨、デジタル通貨、暗号資産は厳密には違いますが、この記事では同じ意味合いで表記します。
※FBが発行を目指す仮想通貨。「世界共通通貨」のようなものを目指している模様。
リブラだけじゃなく、中国が開発を進めているデジタル人民元に対する警戒感が大きいだろう。
これは米中だけの問題ではなく、日本にも大いに影響を与える可能性があるので、最低限の見識は持っていて損はないと思います!
これからの主流はステーブルコイン?
仮想通貨は価格変動が大きく、通貨という名前がついていますが決済には向いていないとされていました。
そこで登場したのがステーブルコイン(安定通貨)です。
ステーブルコインとは、発行する会社が裏付けとなる資産を保有し、価格を一定に保つ仕組みを持った仮想通貨のことです。
テザー社の発行するテザー「法定通貨担保型」が有名で、1ドル=1テザーで固定されています。
原油や金、債券といったものに連動するタイプや、仮想通貨と連動する「仮想通貨担保型」、コインの供給量をアルゴリズムで調整する「無担保型」というものもありますが、うまくいっているものは少ないようです。
今のところ広く取引されているのはテザーですが、裏付け資産を74%しか保有していなかったなどという報道もあり、何かきっかけがあれば暴落する恐れはあります。
ステーブルコインにしろ、価値の変動する仮想通貨にしろ、発行者が信頼できるかどうかは非常に大事です。(初期の段階では特に)
他国(他社)の通貨が国内で流通するとどうなる?リブラの問題点
信頼できる仮想通貨の発行者なんてそうそういませんよね。しかし、GAFAの一角フェイスブック(ユーザー数27億人)ならどうでしょう?
FBのリブラは、ドル、ユーロ、円などの主要法定通貨建ての銀行預金や、変動制の低い国債で全額裏付けられるとされるステーブルコインです。
アフリカや中南米など、自国通貨が信用できないという国はとても多いです。銀行口座を持っておらず、送金を物理的な運搬に頼る人も多くいます。
不安定な自国通貨を使うより、FBのリブラの方が信頼できてかつ便利となれば、皆使うようになるのは自然なことです。(セキュリティ的には穴のあるビットコインでさえ使われているわけですし。)
自国通貨よりも他社(他国)の通貨を使う人が多数を占めると様々な問題が起こります。
まず、需要がなくなれば、当然自国通貨の価値は暴落します。ちょうどいい範囲のインフレで収まらないレベルの暴落でしょう。
しかし、政府による公務員給与は自国通貨で支払われるので、もはや価値を失った紙切れをもらっても生活は成り立ちません。同時に、ただの紙切れとなった自国通貨を大量に保有する銀行も破綻します。
自国通貨を使う人がほとんどいないので、金融を引き締めようが無意味です。
つまり、他国(他社)の通貨に支配されるということは、自国の金融政策が全く効かなくなり、金利も意味をなさなくなります。中央銀行による物価安定の機能も失われます。
通貨の侵害は国家主権の侵害と同じなのです。
もちろん、フェイスブックに万が一の事態があった場合はリブラの価値が下落することも考えられます。そうなればリブラを採用した国から連鎖的に不況に陥るでしょう。(とはいえ、通貨の発行母体が国であっても通貨の毀損はしばしば起こりますが。)
世界共通通貨のデメリットはまさにこの点にあります。通貨発行できる国以外は自由に経済政策をコントロールできないので、非常にリスキーなバランスで成り立つ世界になるでしょう。
金融技術の進歩は止まらない!ドル依存からの脱却を目指す国々
国際銀行間通信協会(SWIFT)をご存じでしょうか。簡単に言うと、国際決済をする際に必要なサービス(銀行と銀行の橋渡しをするシステム)を提供する会社です。ほぼ全ての国際決済がこのシステムを通して行われます。
本社はベルギーにありながらもアメリカの影響が強いと言われており、経済制裁の一環としてこのシステムからの締め出しを要求するケースもあります。
現在世界で一番使われている通貨はドルです。SWIFTによると、2019年8月時点の国際決済のシェアは、1位米ドル42.5%強、2位ユーロ32.0%強、3位英ポンド6.2%、4位日本3.6%、5位人民元2.2%、6位カナダドル1.7%となっています。
つまり、ドルとswiftを使わないと国際貿易が難しいというのが現状です。
中国や新興国はその影響下から逃れるため、新たな決済方法や、強い自国通貨(通貨防衛も兼ねて)の模索に日々心血を注いでいます。
すでにカンボジアでは、中央銀行では初となるデジタル決済通貨「バコン」の試験運用を開始していますし、シンガポールのシングテル社の「ダッシュ」という決済サービスでは、インドネシア、フィリピン、インド、中国などの近隣諸国へ送金可能になっています。「ダッシュ」はSWIFTを介さず取引ができるとのことです。(経済制裁の抜け道に使えそう…)
そして現時点で一番の脅威と目されている、中国のデジタル人民元が後ろに控えています。(真打登場!?)
日本では、旧皇族の竹田恒泰さんがCEOを務めるxcoin社が、世界156か国の通貨と交換できるというステーブルコインの発行を予定しています。(xcoin着金までなんと4秒というスピード決済!)
長くなってしまったので、リブラと並んで世界の金融システムを変えてしまう可能性を秘めている「デジタル人民元」の脅威は次回解説します!
・中央銀行が発行するデジタル通貨(CBDC)の研究が進んでいる
・現時点でリブラの問題点は多い
・アメリカが通貨戦争を黙って見ているわけがない
・通貨を奪われることは主権を奪われることに等しい
2 これからの主流はステーブルコイン?
3 他国(他社)の通貨が国内で流通するとどうなる?リブラの問題点
4 金融技術の進歩は止まらない!ドル依存からの脱却を目指す国々