ドル円相場は、過去1ヶ月間146円から149円という狭いレンジ内での動きに終始し、方向感に欠ける展開が続いています。

この背景には、通貨市場において円とドルのパフォーマンスが共に低迷しているという事実（過去1ヶ月で円が7位、米ドルが8位という弱さ）があります。

これは単なる一時的な現象ではなく、通貨そのものの価値が問われる構造的な変化を示唆している可能性があります。
この『円もドルも弱い』という状況を象徴しているのが、金価格の高騰です。金価格は円建て、ドル建て双方で史上最高値を更新しています。

これは、金の価値そのものが急上昇したというより、価値の尺度であるはずの『通貨』の信頼性が相対的に低下していることの表れと言えるでしょう。

特に米国では、中央銀行の独立性が政治的圧力によって脅かされる場面が見られ、通貨の信認が揺らぎ始めています。このような状況では、通貨価値の低下は避けられないでしょう。

そして、今週は日米で金融政策決定会合が開催され、今後の方向性を占う上で極めて重要と言えます。この記事では、見どころや具体的な対策について解説していきます。

FOMC：利下げは確実、焦点はその先

まず、9月16～17日米国のFOMCでは、最近の雇用統計の伸びの鈍化などを受け、FRB（米連邦準備理事会）が0.25%（25bp）の利下げに踏み切ることが有力視されています。

ただし、重要なのは、市場がすでに年内に合計0.75％、来年末までには累計1.5％程度の利下げを織り込んでいる点です。
そのため、今回の利下げの有無よりも、今後の金融政策の方向性を示すFOMCメンバーの政策金利見通し（ドットチャート）や、パウエル議長の記者会見での発言が最大の焦点となります。

過去の言動やスタンスを踏まえると、パウエル議長は0.25％の利下げを実施する一方、追加利下げには慎重な姿勢を示す可能性があります。

その場合、市場はこれを『タカ派的な利下げ』と受け止めるでしょう。実際に昨年9月の利下げ開始局面でも、その後の議長会見や堅調な経済指標を受けて米長期金利とドルは反発に転じました。

今回も同様に、利下げがきっかけとなり、逆にドルが上昇するシナリオは十分に考えられます。

一方で、今後のリスクシナリオは、政治的圧力による過度な利下げ要求です。経済の基礎的条件（ファンダメンタルズ）を無視した利下げが強行されれば、短期的には株価を支えるかもしれません。

しかし、長期的にはドルの信認を著しく損ない、ドル安からのインフレと長期金利の上昇を招く危険性をはらんでいます。

日銀：身動きが取れない円の将来

日本に目を向けると、日銀は現状の金融政策を据え置く可能性が濃厚です。自民党総裁選挙を控え、政府・日銀ともに大きな政策変更は難しい状況にあります。

すでに一部メディアで9月会合での利上げ見送りが報じられており、市場の関心は総裁選後の新政権の経済対策へと移っています。

■朝日新聞報道→日銀、利上げ見送りの公算大　関税影響を秋以降の経済データで見極め

仮に選挙後に政権基盤が脆弱な場合、大規模な財政出動が選択され、日銀に対しても金融緩和の継続を求める圧力が一層強まることも考えられます。

日本の市場では、すでに将来の財政悪化への懸念が表れ始めています。長期金利（30年債利回り）と中期金利（10年債利回り）の差は過去最大に拡大し、将来的な金利上昇リスクを織り込む動きが見られます。

さらに…

◆高止まりするインフレ：生鮮食品を除くコアCPIは3%台で高止まりしているにもかかわらず、政策金利は実質ゼロの状態。

◆構造的な円売り圧力：企業の対外直接投資や、個人の新NISAを通じた米国株への投資が止まらない。

◆輸入依存体質：エネルギーや食料品の多くを輸入に頼る構造。

これらの要因を踏まえれば、円の価値は構造的に下落しやすい地合いにあると言えます。金価格や長期金利の上昇は、その未来を映す先行指標なのかもしれません。

結論：不確実な時代を乗り切る投資戦略

ドル円は重要イベントを前に方向感を探る展開ですが、その背景では『通貨価値の低下』という大きな潮流が進んでいます。

日米の金融政策会合の結果次第では、上下どちらにも大きく動き出す可能性を秘めていますが、円は構造的に弱く、ドルも政治・金融要因で不安定さを増す中、特定の通貨に依存するリスクを避け、計画的に資産を分散させる必要があるでしょう。

具体的な投資戦略・アクションプラン

このような局面で有効となるのが、『短期的な変動に対応するFX』と『長期的な通貨価値の低下に備える証券』の組み合わせです。

◆短期戦略（FX）：機動力やスワップを活かした取引
特にFOMCにおいては、利下げを意識したドル安が先行する可能性があります。もっとも、パウエル議長がよほど将来の利下げにコミットしない限り、ドルが売られ続ける可能性は低いと考えます。

したがって、以前から繰り返している通り、短期的に米国株を買おうと考えている場合は、146円前半から半ばである程度はドル転（ドルに両替）しておくと良いでしょう。

また、今年の傾向として145円の大台節目を割り込むと深めの調整になる傾向があることから、そうなった場合には142円台でしっかりドル転したり、ドル円をロングしてスワップポジションを形成することを心がけましょう。

◆中長期戦略：ドル建てによる資産防衛・分散投資
インフレや通貨下落への備えとして、金の現物、ETF、投資信託などをポートフォリオに組み入れ、通貨価値の目減りをヘッジします。

新NISA枠なども活用し、米国株やドル建て資産へ計画的に資金を振り分け、円への集中リスクを低減していくことが重要です。

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