前回のおさらい
投機としての仮想通貨バブルははじけたが、その後資産が裏付けされて価格変動のないステーブルコイン(安定通貨)の決済での利用が模索され、ついにはフェイスブックの「リブラ」中国の「デジタル人民元」という世界経済の秩序を変えてしまう代物が計画されはじめた。自国の通貨が侵害されることは主権を犯されるに等しい。日本をはじめ、世界各国の中央銀行でデジタル通貨「CBDC」での防衛が急がれる。
最強の仮想通貨、デジタル人民元襲来!?
ビットコインなどの仮想通貨は匿名性が非常に高く、プライバシーが守られるという非中央集権型のシステムが良い点でした。裏を返せば、マネーロンダリングや通貨の盗難も可能というのがデメリットです。
価格が安定せず、決済にも使うことができません。そこで登場したのがステーブルコインだということは前回書きましたが、さらに一歩進めると、国がデジタル通貨を発行、管理をするという発想に辿り着きます。
それをいち早くやろうとしたのが中国です。(カンボジアに先を越されましたが。)
元々ビットコインは中国国内の取引が活発でしたが、ビットコインが海外への送金に使われ資本流出が相次ぎました。事態を重く見た中国共産党政府は、ビットコインをはじめとした仮想通貨の取引を全面的に禁止。
一方で、仮想通貨に用いられるブロックチェーン技術に目をつけ研究開発は進めていました。
そして昨年8月、中国人民銀行の偉い人が「5年かけて研究を続けた結果いつでもデジタル人民元は発行可能(どやっ!)」と述べています。これは、昨年の6月にFBがリブラ構想をぶち上げたことを意識したのは明らかです。次々に仮想通貨に関する法案も通しています。
実質独裁国家の中国がデジタル通貨を発行すれば、利用者の情報は全て把握されてしまうでしょう。
非中央集権的な部分が注目されたブロックチェーン技術が、より中央集権的な形で利用されるというのは皮肉な話です。
デジタル人民元の主な目的と効果
①資本流出の防止
→中国政府と人民元に対する信頼は薄く、海外へ資産を逃避させる人が相次いでいることへの規制。
②人民元の国際化
→基軸通貨の座を奪いたい中国ですが、人民元の為替、貿易取引ともに思うように伸びていません。その切り札として期待されているのが、一帯一路とデジタル人民元です。
一帯一路ですでに中国に協力している国に対し、デジタル人民元を利用できる環境を整備すれば自然と普及するでしょう。
「人民元なんて信用できない!使うわけがない!」と日本人なら誰もが思うでしょうが、前編でも述べたように自国の脆弱な通貨よりも人民元を信頼する国は少なくありません。今後中国と人民元の影響力が増せば尚更です。
③中国共産党政府による監視社会の強化
→中国は豊かになった反動で共産党による統治にひずみが生じています。信用スコアや厳しい情報統制によってなんとか抑え込もうとしていますが、政府への不満は高まるばかりです。
お金の流れが透明化されれば反乱分子の把握が容易になり、社会もコントロールしやすくなります。
プライバシーは全くなくなりますが、悪いことさえしなければ住みやすいという声も一部あるようで、このあたりは価値観の問題かもしれません。とはいえ、国民が抑圧されて長く続いた国なんてありませんが…。
アメリカもデジタル通貨発行に必ず動く
覇権国として君臨するアメリカの力の源泉は軍事力、それを支えるのは当然経済力です。基軸通貨ドルによる支配が行き届かなくなると、経済力も軍事力も衰えることは間違いないでしょう。
ドル支配を崩壊させかねないフェイスブックのリブラは、G20だけでなくアメリカ国内でも批判にさらされました。しかし、「世界のインターネット上の倫理が、今後はアメリカ式か中国式のどちらかによって運営されることになる」とザッカーバーグ氏が発言したことから流れが変わりつつあります。
リブラがアメリカ式(自由と民主主義に基づく倫理観)で運営されるとなれば再評価される可能性はありそうです。何よりデジタル通貨でも5GでもAIでも、中国に後れを取るわけにはいきません。
FBがやらなくとも、アメリカには巨大IT企業が後ろに控えているので(アマゾンがすでに仮想通貨の研究をしているという噂も)アメリカ発のデジタル通貨がリリースされるのは時間の問題でしょう。
日本はどうすべき?デジタル円を発行せよ!
デジタル人民元やリブラ、その他のデジタル通貨は様々な問題を抱えていますし、普及するかどうかは未知数です。
しかし、万一うまくいった場合、中国の隣国である日本はモロに影響を受けるでしょう。中国との貿易額が大きい日本に対してデジタル人民元決済を迫る可能性は十分あります。
最初の標的にされやすそうなのは沖縄です。
現在沖縄は中国と政治的にも経済的にも密接な関係にあります。中国政府がデジタル人民元決済を望めば、今の沖縄の状況では受け入れる可能性は高いです。そうなれば沖縄が一層親中に傾くのは容易に想像できます。
たかが通貨でしょ?何使っても一緒じゃない?と思う方もいるかもしれませんが、前編で述べたように通貨の侵害は主権の侵害です。金融政策が効かなくなります。
それに普段はあまり意識しませんが、海外で海外の通貨を使う時、海外にいると実感しますよね。つまり、心理的な面でも通貨は国の個性を形成する重要な要素ということです。物理的にも精神的にも国に対する帰属意識が薄れることに繋がります。
日本が日本であるためにすべきことは、他国のデジタル通貨が流通する前に日本で円のデジタル通貨を発行してしまうことです。
現在の日本円の価値を鑑みれば、むしろ他国への影響力が増すはずです。その場合、情報管理など技術的な問題をすべてクリアして、日本式の保守的な考えに基づいて利用拡大するのが望ましいのは言うまでもありません。
利害調整でリリースまで時間がかかるというのであれば、当面の間は、デジタル円構想を持っている竹田さんのxcoinを推進するというのも一つの手段です。
傍観という愚策だけは絶対に避けなければなりません。確かに現金は誰でも気軽に使えて便利ですが、コストの面や脱税のしやすさなど問題点も多くあります。通貨の歴史は古いですが、本格的に現在の中央銀行のような制度になってから100年ちょっとしか経っていません。
たまたまここ100年間にマッチしていただけといえます。それが限界にきている以上、日本は下手に守りに入ることなく、進んで変化を受け入れるべきだと筆者は考えます。
でも、中国政府が日本円と連動するステーブルコインを発行することだってありえるわけです!もっとスピーディーに進めないと手遅れになります!
・通貨は経済だけでなく政治(投票行動)にも影響を及ぼす
・通貨防衛のためにも円のデジタル化を進めるべき
・民間のデジタル通貨を後押しするのも選択肢の一つ。傍観だけは厳禁!
・円のデジタル化の話が出たら、拒絶反応を示さず状況を整理して判断することが大事
2 デジタル人民元の主な目的と効果
3 アメリカもデジタル通貨発行に必ず動く
4 日本はどうすべき?デジタル円を発行せよ!