【8/31週】エヌビディア好決算でも急落…米国債5.21%が示す「10月まで上値が重い」理由

日本も例外ではないですが、米国を中心に金利が急騰しており、30年債利回りが5.21%とS&P500の益回り(約4.8%)を上回り、株を買う理由が数字上も弱まっています。
※益利回り:1株あたり税引利益(1株あたり純利益)を株価で割ったもの(今の株価に対して、その会社が1年間でどれくらい利益を稼いでいるかの指標)
また、多額のAI投資が債券市場と株式市場の両方から資金を吸い上げています。社債発行も株式発行も過去最高ペースで、10月にはAnthropicによる史上最大級のIPO(新規株式公開)も予想されています。
こんな感じで、金利が急騰する中で、わざわざAI投資しなくても…という雰囲気と、そもそも金利高と資金需要でカツカツなので、なかなか株価が上がりにくい環境になっています。
したがって、しばらくはレンジで上値が重いので、そのつもりで。新規勢は今のうちに軽く仕込みつつ、大きく下がる日があれば、すかさず追加といったイメージで良いでしょう。
それでは、今週の展望と現在の相場の見立てについて簡単に解説していきますので、ぜひ最後までお読みください。

伸びないエヌビディア!先週末に何が起きた?
まずは先週末の各指数の動きを振り返っていきましょう。指数だけ見れば『小幅安』ですが、中身はかなり荒れた展開でした。🔹S&P500:7,711.76(▲0.25%)/週間では+0.5%
🔹ナスダック総合:26,402.42(-0.52%)/週間 +0.9%
🔹ダウ:53,559.99(▲0.02%)/週間 +0.5%
🔹SOX(半導体)指数:11,469.66(▲412.51、約-3.5%)
水曜引け後のエヌビディア決算は文句なしの内容でした。2028年度の売上成長率見通しは70%と、アナリスト平均予想44%を大きく上回り、翌27日(木)の株価は+8.7%と2025年4月以来の大幅高を記録しました。
ところが金曜、そのエヌビディアは▲4.45%と木曜の上げの大半を吐き出しています。好決算を出したマーベルに至っては▲10.3%の下落です。
理由は明快で、ジャクソンホール会議です。5月に就任したウォーシュFRB議長は、「PCEインフレは過去1年で3.7%、直近6カ月では年率4.1%。夏場の良好なインフレ指標も基調が意味あるほど改善したことを示すものではない。2%目標は確固として動かない目標だ」としました。
これを受け、市場は『利下げ待ち』から『利上げ警戒』に一気に切り替わりました。
CMEフェドウォッチ(債券市場が織り込む利上げ確率)の9月利上げ確率は、講演前の35〜40%から金曜には56〜59%へ。
そして、本日8月31日のアジア時間には60.4%まで上昇しています。利上げが実現すれば政策金利は3.75〜4.00%となります。
また、今日(8/31)の東京市場では、日経平均は寄り付き▲737円、前場には下げ幅▲1,500円超となりましたが、後場に買い戻しが入り、終値は66,311.93円(▲93.63円、-0.14%)とほぼ横ばい。TOPIXはむしろプラス(4,156.29、+0.23%)です。
一方で日本の長期金利(10年債利回り)は一時2.950%で、1996年9月以来、30年ぶりの高水準で3%が見えてきました。
株は足踏みして、金利だけが上がっているという、典型的な株が伸びにくい商状となっています。
10月を通過するまで、上値は重い
材料そのもの悪くありません。ここ数週間の決算ラッシュで発表されたQ2では発表済み企業の86%がEPS予想を上回りました(5年平均78%、10年平均76%)。ゴールドマンは年末8,000ポイントを予想しています。それでも、少なくとも10月を通過するまで、ここから上に行くのは、割としんどいと見ています。
理由は業績でもバリュエーションでもありません。カネの出入り、つまり資金需給です。
💡【用語】資金需給とは?
→『株を買いたい人のお金』と『市場に出てくる株の量』のバランスのこと。どんなに良い会社でも、買い手のお金が別のところ(債券や新規上場株)に流れていれば株価は上がりにくい。逆にお金が余っていれば、多少割高でも買われる。バブルはこの『お金が余った状態』から生まれます。
結論から言うと、バブルは『カネ余り』から生まれますが、いまはその逆で、市場からカネを吸い上げるパイプが同時に何本も開いている状態です。
以下、そのパイプを3本、順に見ていきます。
理由① 無リスク金利が、株の益回りを追い抜いた
まずはこれですね。去年までと方向が逆になっているのがポイントです。FRBは政策金利を3.50〜3.75%で据え置いてきましたが、7月FOMCではハマック(クリーブランド連銀)ら複数の地区連銀総裁が『利上げすべきだ』として据え置きに反対票を投じました。
反対派が『利下げすべき』から『利上げすべきだ』に変わったのは、去年までと真逆です。
また、繰り返しになりますが長期金利を中心に金利が露骨に上がっています(8月28日終値の米国債利回り)。
・2年: 4.36%
・5年: 4.49%
・10年: 4.72%
・30年: 5.21%
30年債は8月17〜18日に一時5.33%と、2007年以来の高水準をつけました。財務省は市場機能への懸念から、長期債バイバック(買い戻し)の1回あたり上限を倍増させており、当局側も長期ゾーンの需給が苦しいと認識しています。
💡【用語】益回り(PERの逆数)
→PER20倍なら益回りは1÷20=5%。『その株を丸ごと買ったら、企業の利益ベースで年何%のリターンに相当するか』という数字。債券の利回りと直接比べられるので便利です。
S&P500の予想PERは21倍前後。逆数を取れば益回りは約4.8%です。つまり、10年債(4.72%)とはほぼ同じで、30年債(5.21%)には完全に負けています。
30年米国債を買ったほうが、S&P500を丸ごと買うより高い利回りが取れる計算となります。
株式リスクプレミアム(株を持つ『危険手当』)は、実質的に消えており、株を買う積極的な理由が、数字の上でも弱くなっているわけです。
そして、利上げの理由はインフレが止まらないことですが、2月末に始まった対イラン戦争により、ホルムズ海峡が事実上機能不全に陥っていることが背景としてあります。ブレント原油は足元でも90ドル台(前年比+33%)。エネルギー価格が高止まりする限り、PCEインフレは簡単には落ちません。ウォーシュ議長がタカ派に振れた根っこはここにあります。
この他、日本の10年債も30年ぶりの高水準です。日本は世界最大の米国債保有国ですが、国内で利回りが取れるようになれば、わざわざ為替リスクを取って米債を買う理由が薄れます。
これは米国債の買い手が、構造的に弱まっているサインにもなり得ます。
理由② AI投資が、債券市場からカネを吸い上げている
今年いちばん大きな構造変化はこれだと思っています。データセンターや物理インフラを中心としたAI投資は、もはや各社の自己資金で賄える規模を超えました。ハイパースケーラー主要4社の2026年設備投資ガイダンス合計は7,200〜7,450億ドルとされ、現実には8,000億ドルを余裕で超えるだろうとされています。
ハイパースケーラー合計の現金設備投資が営業キャッシュフローを上回る『クロスオーバー』は、2026年Q3ごろとされています。
そして、自前のキャッシュで足りなくなった分は、借りるしかありません。
ここで効いてくるのが投資適格債(IG債)です。米IG債の発行額は、Q1(1-3月)が前年比+12%、Q2(4-6月)が同+42%と急増。
バンク・オブ・アメリカの試算では、AI関連の債券発行だけで2026年に2,700億ドル。ゴールドマンによれば、AIエコシステム全体では年初来の発行額が5,000億ドルに迫るとしています。
高格付け社債の全体利回りは5%を超えています。30年米国債よりも高い利回りを提示する優良企業の超長期債が多数あることから、年金や生保のマネーは当然そちらへ向かいます。
社債を買うカネと株を買うカネは、多くの場合同じ運用者から出ていますから、株は『相対的に負ける』というよりは、そもそも現状で順番が回ってきにくい状況です。
さらに、米IG債には強い季節性があります。レーバーデー(今年は9月7日)明けの週は、年間で最も起債が重い週のひとつで、今年はCPIとFOMCに挟まれた最悪のタイミングで供給の山が来ることが予想されています。

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理由③ 株式そのものの供給が、記録的に増えている
IPOと増資は、市場に新しい株券を作り出す行為です。2026年Q2の米国の株式発行総額は2,520億ドルで過去最高でした。通年でも7,000億ドルと過去最高の見通しです。AI関連の資金需要が追加売出しの約40%を占めています。
また、この筆頭が6月に上場したスペースX(時価総額1.77兆ドル、米国史上最大のIPO)が挙げられます。
10月にはさらに、Anthropic(アンスロピック)の上場が控えていると観測されています。評価額2兆ドル超での上場となれば、スペースXを抜いて史上最大となります。
さらに厄介なのが『インデックス組み入れ』です。超大型IPOがインデックスに採用されると、ファンドは強制的な買い手となり、既存の構成銘柄を売って資金を作るしかありません。
このようにIPO本体の需要と、リバランス売買で、二重に既存株から資金が抜かれるという構造があり、これが皮肉にも上値を重くしています。
なぜ『10月まで』なのか
需給の重石が、まさにこの9〜10月に集中しているからです。今週からの主なスケジュールです。・9/4(金): 8月米雇用統計(FOMC前最後の雇用統計。最大の山場)
⭐️9/7(月)週: レーバーデー明け。米社債の起債ラッシュ(資金吸収のピーク)
・9/11(金): 米CPI
⭐️9/15〜16: FOMC(SEP公表。利上げか据え置きか)
・9/17〜18: 日銀金融政策決定会合(追加利上げ観測あり)
・9月末: 四半期末リバランス
⭐️10月: Anthropic上場観測、Q3決算スタート(ハイパースケーラーの来期設備投資額に注目)
⭐️11/3: 米中間選挙
裏を返せば、これらを無難に通過すれば重石は軽くなります。だから『弱気』ではなく『10月まで上がりにくい相場』というわけです。
また、韓国のメモリ企業が多額の自社株買いを発表したように、米企業の今年の自社株買いは1.4兆ドルに達する見込みで、株式発行額を大きく上回ります。需給的には強力なプラスですから、指数の底はかなり硬いです。
このほかの強気材料(QT終了済み、バリュエーションはITバブル期ほど異常ではないなど)もありますし、FOMCが据え置き、Anthropic上場が延期、中東情勢改善による原油安、これらが重なればシナリオは大きく変わります。
なので、何度も繰り返している通り、この株価が重い今のチャンスに、しっかりと株を買うことが重要と言えるでしょう。
まとめ:見るべき指標は3つ
AIバブル、などという人は多くいますが、今は全くバブルが発生するような環境にはありません。バブルには余剰資金が要りますが、いまは資金の奪い合いが起きています。
そして、『上がらない』のではなく『上がりにくい』だけです。1.4兆ドルの自社株買いが下値を支える一方で、上値では資金がインフラ投資や債券に吸われています。
これにより、高値圏でのレンジ相場が続きやすい状況です。
今後の需給の局面変化を測るなら、以下の3つに注目しておきましょう。
✔︎米投資適格債のスプレッド(特にハイパースケーラー債)
✔︎米30年債利回り(5.0%を明確に割るかどうか)
✔︎大型IPOの初値と1カ月後の株価(Anthropicが試金石)
これらが全体的に落ち着いていけば、風向きは変わり、AIバブル相場2.0がやってくるでしょう。
それまではしばらく我慢の時期ではありますが、じっくりと株価を仕込んで育児期と割り切ってやっていきましょう。
多くの人は、どうしても株価が上がると注目をして投資をスタートしますが、安く買って高く売るのが株の基本ですから、実は今こそがチャンスですよ👍

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コメントするc⌒っ *・∀・)φ...オキガルニドウゾ!